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熱帯魚

とある夏の午後のだった。
いつものように二人で自転車で学校から帰っている途中にヒロミは財布に新しくできたファーストフード店の割引券があるのを思い出した。
早く使わないと期限が切れてしまう。


ねぇ、これあるんだけど食べて帰らない?

あぁ、これあそこかぁ。全然逆なんだけどいってみようか。うまそうだねー!


いつもの帰り道とは駅をはさんで逆方向になる。
あのあたりはあまり用もないし行く機会もなかった。
駅近くの踏切を渡らなくてはいけないしかなり面倒なのだ。
近いけど遠い町、そんな表現が似合っている。

この駅の商店街の裏手になるので少し寂れているのだがそれでも人通りがある、そんな場所にその店は建っていた。
ヒロミもこちらの商店街にはあまり来たことがなくキョロキョロと落ち着かない様子だった。


あっ!あれ!見て見て!


ヒロミは興奮した様子でとある店舗を指差しアキラの顔を見た。
目がいつもよりも増してキラキラしているのに気づいたアキラはどうしたのかなと不思議そうにヒロミの指さす方に視線をうつした。


そこは熱帯魚ショップだった。

お世辞にもきれいなお店だとはいえずずっとここで営業しているのだろうと思った。
店舗の入り口のショウウィンドウに水槽があり綺麗な魚が泳いでいる。
ヒロミはショウウィンドウに貼りついてしまった。


ねぇねぇ、ちょっと見ていってもいいかな?


キラキラした目がそういうのでアキラは思わずうなずいてしまった。
店に入るとそこは自分が水の中にいるような錯覚を覚えた。
店自体があまり大きくないので水槽が棚に積み上げられている。
振り返れば魚がいる、そんな状態だったのだ。

ヒロミはあれもこれもというような状態で落ち着かない様子。アキラにいろいろ魚について説明を交えながら店の中を徘徊していた。
バスガイドのようだとアキラは思った。
そうしているうちに一つの水槽の前で立ち止まって動かなくなってしまった。
アキラが覗き込むとそこには水槽に一匹の熱帯魚がいた。
小さく青黒い色をしたその熱帯魚は泳ぐというより水槽の中で佇んでいるようだった。
水槽の右上に値札が貼り付けられており、何度も値段が斜線で消されていて安くなっているようだった。売れ残ったのか売れないのかわからない。
でももう店側としては処分したいのかなと思った。


ねぇ、この子飼わない?かなりお得になっているみたいよ?

ヒロミはキラキラした瞳でそういった。

うん、飼おうっか!何か飼いたいねって話してたもんね。熱帯魚ならそれほど苦にならなさそうだし。。。でもこれ色があまり綺麗じゃないかも?

ううん、そんなことないよ。この子はかわいいよ。
毎度ありがとうございまーす。


ヒロミにはこの熱帯魚に何か別のものが見えているような感じだった。
店員さんを呼んで水槽から餌から1セット選んでもらってアキラは昨日もらったバイト代からその代金を払った。

その後、忘れかけていたファーストフード店に行きテイクアウトしてからまた自転車を押しながらアキラの部屋に帰って行った。

小説 青い魚(下書き)

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上司(2008年3月20日)
転機(2008年3月18日)
夕焼け(2008年3月 5日)
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