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スーツ

ヒロミとアキラと青い魚の生活は順調だった。
ヒロミは幸せという言葉を口にするようになっていた。
日が昇って日が暮れる、そんな単調な毎日でさえ大切に思えた。


でも今のヒロミにはひとつだけ不安があった。
アキラが今年で大学を卒業してしまう。
そのためにこれから就職活動をしなければならない。
アキラが就職したら来年からは一人で大学に行かなければならないし、一緒にいれる時間も限られてくるだろう。
そういう日が迫ってきているのだが充実した毎日がそれを忘れさせていた。


 

その不安が具体化する日がやってきた。
アキラのスーツ姿をヒロミは初めて見たのだ。


へぇー、似合ってるじゃん。。


そぉ?かっこいい?


ヒロミは近くから遠くから、首をかしげながらアキラを見つめていた。


そうしているうちに少し寂しい気持ちになっている自分に気がついた。
アキラが遠くに感じられてしまったのだ。
だんだんと遠くに離れていってもう取り返しがつかないような気分に襲われアキラに抱きついてしまった。

おぉ、どうしたの?

えへへ、実はスーツフェチ。

こういうのが好きなんでしょ?このネクタイをこうやって緩める感じ。

あるある!それそれー!


 
ヒロミはおどけて見せた。

なんかアキラが遠くに行ってしまいそう。。。

心の中ではそうつぶやいている自分がいた。


 

就職活動の初日、ヒロミはアキラを送り出そうといっしょに玄関の外まで出た。


それではいってらっしゃいませ!

ヒロミはアキラに敬礼した。

がんばるであります!
フフフ、終わったらすぐ帰ってくるからね。

そういってアキラはヒロミに手を振り駅の方向にあるいていった。
ヒロミはアキラを送り出した後しばし空を見上げていた。
晴れ渡った空に雲が少し浮かんでる。
部屋に戻ったヒロミは青い魚の水槽の前に座り込んでずっと青い魚を見つめていた。

小説 青い魚(下書き)

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上司(2008年3月20日)
転機(2008年3月18日)
夕焼け(2008年3月 5日)
電車(2008年2月27日)