月日が流れても二人の状況に変わりはなかった。
ただ、二人の間の見えない隔たりはさらに大きくなっていった。
アキラは酔って帰ることもありヒロミはどうしていいかわからないような感じを覚えた。
アキラが別人のように思えたこともある。
二人で決めた餌やりの当番もアキラは忘れるようになっていた。
それに対してヒロミは今までの不安をぶつけるように怒った。
寂しさや苛立たしさ、どうにもならない状況に対しての思いを餌をたまにやり忘れるアキラに対してぶつけてしまうのだった。
ごめんね、わすれないようにするから。。。
アキラは素直に謝るのだがそれもヒロミを苛立たせた。
アキラは悪くない、謝らなくていい、なんで謝るの?ヒロミはそう思い、今度は怒った自分を責めるのだった。
もう、どこに感情をぶつければいいのかわからない。
苛立った感情の行き場を探しているようだった。
ヒロミは一人の時によく青い魚に話しかけていた。
なんでお互いに好きなのにすれ違わなきゃいけないの???
もう元には戻れないの??
アキラには涙を見せたことはなかったけれども青い魚の前ではポロポロと涙をこぼすこともあった。
ヒロミは青い魚のことを自分と重ねて見るようになっていた。
水槽の中で一人でいる青い魚がアキラの部屋の中で一人で過ごす自分と同じように思えて好きという感情よりも自分自身だと思うようになっていたのだ。
ある朝のことだった。
自分の部屋で寝ていたヒロミは朝の支度をしようとアキラの部屋を訪ねた。
ドアを開けて奥の方に水槽があるのだが今日はいつもと様子が違っていた。
カーテン越しの朝の光の中でいつも水槽の中にいた青い魚の姿はなかった。
悪い予感がした。
近づいてみるとその青い胴体を天に向けて青い魚は動かなくなっていた。
青い魚は死んでしまった。
ヒロミは高く積み上げた積木が一気に崩れるように床にへたり込んでしまった。