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「青い魚」の物語

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「青い魚」の物語

あぁ、赤だ。。。


正確には赤に変わっていない。
歩行者用の信号が点滅し始めた。
周りの人たちは赤になる前に渡りきろうと小走りになった。

早く帰っても。。。何があるというのだろう?

急ぐ人たちの後姿をぼんやりと眺めながらヒロミはそう思った。


都心から20分ほど電車で下るとどこにでもあるような町だ。
下りの電車は都心からの通勤帰りの人をひっきりなしに運んでくる。
ヒロミもその中に紛れていた。
駅の西口を出ると小さなバスロータリーがあり、それを抜けるとそれなりにおしゃれに食事ができるお店や居酒屋、バー、コンビニ、スーパー、レンタルビデオ屋など普通に揃っていてここから一生出ていかなくても生活できそうだと思えた。
これらの商店が連なって作られた商店街を抜けたところに大きな道路を横切るための信号がある。


疲れているのよ。


同僚はそう言っていたし、実際に疲れていた。
研修期間も終わり、スーツ姿もそれほど違和感がなくなってきた頃である。


どうして。。。いや、やっぱり考えるのはよそう。


同僚の言うように疲れているんだと自分に言い聞かせた。
疲れていることにすれば何も考えなくて済む。明日になって元気になればすべてうまくいくのだ。そう言い聞かせることにした。


この町に住んでどれくらいになるのだろう?
かなり月日が経ったように思えるがそうでもないような気もする。とにかく上京してからずっとこの町に住んでいる。

そろそろどこか知らない土地に引っ越したほうがいいのかなぁ?なんか最近町がよそよそしく感じるんだよね。。もう出て行けってことなのかなぁ?大学時代によく行ったあの店もなんだか行く気にはなれないし。。なんでこの町に住んでいるのかわかんなくなってきた。。。


青信号を待っている間にいろいろなことが頭を過った。
時計は午後八時を指している。あたりはすっかり夜の気配で夜の喧騒が鼓膜張り付く。人の笑い声、車の走る音、靴の音、しゃべる自動販売機、バスの車内放送などが一気に同時に耳に入り込む。耳を塞いでみても夜の街を見るだけでこれらの音が聞こえてくるような気がした。

肩に後ろから人がぶつかってきてその痛みで我に帰った。周りの人が動き出している。

青信号になったんだ、歩かなきゃ。。。

ヒロミはこの先の路地にある駐輪場へと向かった。




 
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